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第4章(2)

 翌日、私は内大臣家に足を向けた。もちろん男装して。
 私が呼ぶと、小侍従はすぐに姿を見せた。この暑いのに、脂ぎった彼女の顔を見るのも暑苦しい。
「夕霧さまからのお手紙ですか」
 小侍従は、廊下に座っていた私に、円座(わろうだ)を差し出した。
「いや、今日は私用でね」
 と答えると、小侍従は目を輝かせて寄ってきた。
「新しくこちらに身を寄せられた姫君について聞きたいんだ」
「なんだ、そんなことなの」
 小侍従は立とうとする。
「待ってよ。教えてくれたら、何でもするからさ」
 私は焦って言った。
「何でも?」
 小侍従はくるりと向き直った。
「本当ね?」
「ああ」
 私は頷いた。
「それなら話してあげる。内緒の話なんだから、他の人には黙っていてよ」
 小侍従は声を潜めた。
「……私は会っていないけど、姫君付きに回された朋輩の話では、ものすごく早口のおかしな方らしいわ」
 早口というのは、物語の、近江の君の記述に一致する。ホッとしたものの、「本当に内大臣のお子さまなの?」と聞いてみる。
「目元がそっくりだというから、そうなんでしょう」
「姫君は、近江の君とおっしゃるそうだけど」
「よく知っているわね。惟正さん、近江の君に興味があるの?」
「い、いや」
「教えてあげたんだから、約束は守ってね」
 小侍従は流し目を使って言った。
「いいよ、何がほしいんだい。扇とか、着物とか?」
 私は気軽に聞いた。これくらいは必要経費で落ちるだろう。
「物じゃありませんわ。明日の晩、付き合って下さればいいんです」
「付き合うって、あの……」
 私は絶句した。その時、他の女房が小侍従を呼ぶ声が聞こえた。
「亥の刻頃、来てね。私の局の鍵は開けておくから」
 小侍従は耳元で囁くと、するりと御簾の中へ入ってしまった。
 どうしよう。仮病を使ったって、すぐにばれるだろうし、急の物忌みとか……。
 私は呆然とした。

 

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